佐久平駅から小海線に揺られること約30分。
宇宙空間観測所があり、星の町として知られる佐久市臼田エリアへ、東信偏愛女子のひなぽんが行って参りました!

なぜ電車で行ったかというと、大好きな日本酒を飲むため。
臼田には歴史ある酒蔵「橘倉(きつくら)酒造」があり、なんと試飲付きの蔵見学もできるのです。
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のんびりと車窓を眺め、臼田駅または龍岡城駅で降り、街並みを楽しみながらプチトリップ気分。
たどり着いた橘倉酒造は、歴史的建造物が並び、格式ある風格を漂わせていました。


300年以上の伝統を誇る酒蔵

蔵に残るもっとも古い記録によると、元禄9年(1696)にはすでに酒屋であったということから、約330年もの間、酒造り一筋で歩んできた橘倉酒造。

八ヶ岳山系のやわらかい伏流水、佐久市産または長野県産の米、酒造りに適した寒冷な気候など、風土を生かした伝統的な酒造りをモットーに、おいしい酒を醸し続けています。
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すべての酒の仕込み水に使われている伏流水。やわらかくてまろやかな味わい

日本酒がどのように造られているのか、知らない方も多いはず。それを体感してもらうため、30年ほど前から蔵見学を実施しているそう。

蔵人の説明を聞きながら酒造りの工程を学ぶことができるなんてわくわく。しかもちょうど今は新酒の仕込み時期なのでより楽しみ。早速見学へ行ってきます!


日本酒造りを学ぶ

今回見学でお世話になる井出社長の案内のもと、約150年前に建てられたという本蔵へ。
酒造りの工程を紹介した絵図や説明も随所に掲示されており、それを見ながら進んでいきます。
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「こちらはお米を洗って、浸水させ、蒸しあげる場所です。良い蒸米を作るためにはお米の吸水率が重要で、水の温度や米の種類、精米歩合などによって、10秒単位で調整していきます」

なんと、10秒単位!蒸米は酒造りの基本となる工程だそうで、酒造りがいかに繊細な職人技が必要とされるかを感じさせます。
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「蒸米を終えたら適温に冷まし、今度は麹(こうじ)造りです。蒸米に種麹をふりかけ、麹室の中で二昼夜ほど厳正な温度管理をして、麹を造ります。麹は米のデンプンをブドウ糖(糖分)に変える“糖化”の役割を果たします」
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こちらは種麹。もやしとも呼ばれ、この乾燥した麹菌を蒸したお米に振り、2日かけて米麹を作ります

できあがった麹が白く輝いていました。酒造りにおいて「一に麹、二に酛(酒母)、三に造り(醪)」という言葉があるほど、麹作りはもっとも重要な工程です。
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麹造りの次は、酒のもととなる「酒母(しゅぼ)」の製造工程に入ります。

酒母とは、水・米麹・蒸米・酵母(こうぼ)菌を混ぜ合わせたもの。酵母は、麹によって分解された糖分を栄養とし、アルコールを発生させます。
タンクで1週間から10日ほど管理し、酵母を約10倍に増殖させていきます。
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少し覗かせてもらうと、すでに日本酒の良い香りが・・・!たまりません。 
酒母ができたら最終工程の仕込みへと進みます。
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大きなタンクにまず酒母を移動し、水・米麹・蒸米(掛米)を、4日かけて3回に分けて増量し、発酵させていきます(三段仕込み)。
麹の糖化と、酵母のアルコール発酵が同時に起こる「並行複発酵」を経て、醪(もろみ)が出来上がるのです。

醪を見ていると、ぷくぷくシュワシュワと、酵母のささやきも聞こえてきました。
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仕込み期間は造るお酒の種類(普通酒や吟醸酒など)によって異なるそうですが、だいたい20日前後で搾り機へ移し、搾ります。
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搾りたてを新酒として販売するほか、次の冬まで貯蔵し、火入れや熟成を経て随時提供します。
そして春にはまた米作り、秋に収穫、冬に新米で酒を醸す……というサイクルが続いていくのです。

酒造りの工程を学び、改めて普段おいしく味わっている日本酒が、自然の恵みそのものであること、またいかに高度で熟練した職人の技と経験に支えられているかということを実感し、ますます大切に飲もうと感じさせられました。
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エストニアにも“サク市”があり、同じ名前ということから友好姉妹都市だそう。2021年にはカリユライド大統領も来られました


おすすめ3種を試飲

橘倉酒造では蔵見学をしない方も、売店でその時のおすすめ3種を試飲できます(500円)。
今回のタイミングでいただいたのは
  • 定番酒「本菊泉」の初搾り「華酒」(長野県産の一般米使用)
  • 純米吟醸「無尽蔵」の初搾り(佐久産の酒米“ひとごこち”使用)
  • 昨年仕込んだ純米大吟醸「蔵」(自社田で育てられた酒米“金紋錦”使用)
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どれもスッキリ辛め。昨今人気のジューシーな甘い系ではなく、昔ながらで飲み飽きないタイプのお酒です。お米の旨みを感じ、和食などどんな料理にも合いそうです。おいしい!!

ほかにも純米酒の「菊秀」や本醸造の「橘倉樽酒」のほか、スパークリングの発泡純米酒などもあります。
また大人気の米麹100%の甘酒もおすすめ。自分好みのお酒をぜひ見つけてみてください。
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蔵人体験ができる「KURABITO STAY」

じつは橘倉酒造の敷地内には、今注目されている酒蔵ホテル「KURABITO STAY」もあります(別会社が運営)。

日本酒の文化をより身近に感じてもらおうと、かつて蔵人が寝泊まりしていた建物がホテルとして生まれ変わり、記事で紹介した酒造りの工程を実際に体験できるのです(いつか私も参加したい!)。
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左奥がKURABITO STAYの建物

ホテルができてからこれまでの5年間で、全国にとどまらず、世界29カ国から約650名(2024年12月時点)が参加したそう。そのうちの4割が海外からのお客様というから驚きです。

日本酒の需要は50年前から約1/4まで減り、蔵元も半減。今後も人口や飲み会の減少などから、ますます国内の需要は減っていくことが想定されます。
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「日本酒という文化を守り、後世へ伝えていくためには海外も視野に入れていく必要があります。

見学や体験を通じて、この佐久市臼田が、世界から酒を体験できる目的地になって、地域の活性化にも貢献できたらと思います。

そして古き良き、風土を生かした酒を造り続け、その酒が場を和ませたり、楽しんでもらう一助を担えたら嬉しいですね」

井出社長の熱い想いをひしひしと感じながら、ますますこれからも日本酒という誇るべき文化が多くの方に愛され広がることを願いつつ、応援していきたいと思いました!

奥深い日本酒の世界を堪能しに、ぜひ皆さんも佐久市へ立ち寄る際は足を運んでみてください。


橘倉酒造 蔵見学DATA
住所長野県佐久市臼田653-2
電話0267-82-2006
見学について期間/年末年始を除き通年可能(1週間前までに要予約)
所要時間/約1時間(蔵元挨拶20分・蔵内見学20分・試飲販売20分)※必要に応じて調整可
見学料/3000円(4名まで)※5名以上は一人当たり800円追加
予約公式HP 

有料試飲(見学無し、予約無し)/500円(蔵元おすすめ3種飲み比べ)


東信偏愛女子とは……


上田市を中心に活動する女性クリエイターチーム。それぞれの「好き!」をそれぞれの視点で掘り下げ、東信の暮らしを楽しんでいる。
全員一度県外に出たUターン&県外からの移住者だからこそ感じる東信の魅力を感性のおもむくままに取材し、お出かけ情報・暮らし情報を発信します!

メンバーと得意分野 紹介
アユミ(デザイナー)/登山・アート・音楽・美容
ちーやん(編集者・広報)/動物・自然・スーパー・移住暮らし
ひなぽん(イラストレーター・編集者)/ご当地のグルメ・喫茶店・文化・温泉・居酒屋
サポーターさちぽん/グルメ(特にワイン・蕎麦)・イベント


この記事を書いたライター

ひなぽん
ひなぽん
イラストレーター・編集者|千葉県出身。書店に入り浸る学生生活の後、出版社で旅行雑誌の編集者となる。全国各地を取材した経験から、ローカルに魅力を感じ、2017年に上田市に移住。観光関係の広報の仕事や、イラストレーターとして活動中。手相鑑定士でもある。趣味はレトロな風景を求め旅に出ること。とくに喫茶店や工芸品、温泉などが好き。