軽井沢には特有の景色と空気があるように思います。
地形や地質、気候、植生によるものなのか、森林の緑色や雰囲気が、ほかのエリアとは何かが違う気がするのです。
そして明治時代から外国人が多く訪れ、西洋文化が薫る別荘などのクラシカルな建物が多く残ることも、軽井沢を軽井沢たらしめる所以です。

軽井沢タリアセンの塩沢湖から望む「睡鳩荘」
そんなザ・軽井沢の空気をとじ込めたような場所が「軽井沢タリアセン」。
軽井沢の南に位置し、塩沢湖を中心に美術館や文学館、遊戯施設、レストランなどを備えた総合的リゾート施設で、軽井沢の自然と歴史を感じながら一日ゆったりと過ごすことができます。
ちょうど園内のバラも見頃のこの時期。一眼レフカメラを引っ提げて、軽井沢らしい景色を探しながら散策してきました。
塩沢湖とイングリッシュローズ・ガーデン


緑が降り注ぐ園内に入り、中央の水辺の空間を通りすぎると、目の前に広がる塩沢湖。
橋を渡って中の島にたどり着くと、カモがひと休みしていたり、おさんぽしていたりして、平和な光景に癒されます。
私のベストショットはシロツメクサの草原に佇むカモ。メルヘンでかわいすぎます・・!

6月中旬〜9月下旬(見頃は例年6月中旬〜7月上旬)に約200種1800株のイングリッシュローズが咲き誇り、タリアセンの見どころの一つとなっています。

周りの深い森の緑が色とりどりの美しいバラをより引き立たせ、その鮮やかな色や造形美、甘い香りに思わずうっとり。
ガーデンのところどころにある何気ないオブジェや建物、ベンチなどが、どこを切り取っても絵になります。
イングリッシュガーデンとだけあって、まるでピーターラビットの絵本の世界に迷い込んだかのよう。この時期だけの特別な景色に、思わずシャッターを切りつづけました。
イングリッシュガーデンとだけあって、まるでピーターラビットの絵本の世界に迷い込んだかのよう。この時期だけの特別な景色に、思わずシャッターを切りつづけました。



同じバラでも、見る角度などによって表情がまったく変わるので、自分なりに一番きれいだと思う画角を探して撮るのがカメラの醍醐味。
訪れた6月中旬はまだバラの咲き始めだったので、これから満開となりますます美しい景色が広がるはずです。
自然に調和した歴史的な西洋建築をめぐる

鮮やかな森の中に小鳥やリスの姿を発見したり、水辺のきらめきやボートの姿をぼんやりと観察したりして、一周約15分の距離をゆっくりと歩きます。

ボート乗り場の反対側に現れるのが「ペイネ美術館」。
フランスの画家、レイモン・ペイネ(1908〜1999)による、愛と平和をテーマにした恋人たちの絵が並びます。恋人たちの些細な日常の出来事を切り取り、そこにペイネ流のユーモアが加えられていて、思わず笑顔になる作品ばかり。
その発想力がとても豊かで愛らしく、『アンパンマン』の作者・やなせたかしが影響を受けたというのも頷けます。作品のメッセージや空気感がタリアセンの世界観にとてもマッチしていました。

旧帝国ホテルを建設したアントニン・レーモンドが、昭和8年に建てた別荘兼アトリエを移築した建物も立派
ふたたび塩沢湖へと歩みを進め、懐かしい遊戯施設やアスレチックを横目に眺めながら、たどり着いた「深沢紅子 野の花美術館」。
ミントのような明るい緑の外観が特徴的なこの建物は、旧軽井沢の銀座通りに明治44年に建てられた旧軽井沢郵便局を移築したもの。
森にしぜんと溶け込んでおり、軽井沢の野の花を描いた深沢紅子(1903〜1993)の作品が2階に展示されています。



湖畔に佇むこのレトロな建物は「睡鳩荘(すいきゅうそう)[旧朝吹山荘]」。
軽井沢で100を超える西洋建築を設計したヴォーリズによるもので、昭和6年に建てられ、フランス文学者の朝吹登水子が別荘として使用しました。
軽井沢で100を超える西洋建築を設計したヴォーリズによるもので、昭和6年に建てられ、フランス文学者の朝吹登水子が別荘として使用しました。
1階の居間は暖炉やこだわりの家具が並び、エレガントな暮らしぶりが感じられます。





森の中にひっそり佇むカフェ「浄月庵」
今回は最後に、隣接地にある軽井沢ゆかりの文学作品などを展示する「軽井沢高原文庫」内のカフェ「浄月庵」で締めくくります。
作家・有島武郎の父が明治末期から大正初期に軽井沢の三笠に建てた別荘で、父から譲り受け、有島武郎は毎夏をこの別荘で家族と過ごしていましたが、大正12年に愛人と心中。
建物は現在の地に移築され、1階がカフェ、2階が有島武郎記念館となっています。

軽井沢の別荘にお邪魔するような感覚で店内に入ると、CDやレコード、本、ピアノが並ぶ室内につながる形でテラス席があり、緑と木の温もりを感じながら静かな時間が流れます。
歩き疲れた体にアイスコーヒーが染み渡りました。

賑わう旧軽井沢の銀座通りやアウトレットなどの中心エリアとは打って変わって、タリアセンでは、外国人がその自然や気候を気に入って過ごしていたかつての軽井沢を彷彿とさせるような、穏やかで落ち着いた空気を感じられるはず。
ぜひみなさんもカメラを片手に、一瞬のきらめきを永遠に残してはいかがでしょう。きっと特別な思い出になりますよ。
軽井沢タリアセンDATA
住所 | 長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉217 |
問合せ | 0267-46-6161 |
営業時間 | 9~17時(12・1月は10時~16時) |
定休日 | 不定休(冬季休園) ※各美術館や睡鳩荘はそれぞれに休館日が異なります。また冬季の休園日などについても、詳しくはホームページを参照ください。 |
入園料 | 900円(小・中学生400円) ※ペイネ美術館、軽井沢高原文庫、深沢紅子野の花美術館は別途入館料がかかります。お得なセット券もあります。 |
住所 | 長野県北佐久郡軽井沢町長倉217 |
問合せ | 0267-46-2001 |
営業時間 | 11〜17時 |
定休日 | 水・木曜(冬季休) |
東信偏愛女子とは……
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この記事を書いたライター
ひなぽん
イラストレーター・編集者|千葉県出身。書店に入り浸る学生生活の後、出版社で旅行雑誌の編集者となる。全国各地を取材した経験から、ローカルに魅力を感じ、2017年に上田市に移住。観光関係の広報の仕事や、イラストレーターとして活動中。手相鑑定士でもある。趣味はレトロな風景を求め旅に出ること。とくに喫茶店や工芸品、温泉などが好き。
イラストレーター・編集者|千葉県出身。書店に入り浸る学生生活の後、出版社で旅行雑誌の編集者となる。全国各地を取材した経験から、ローカルに魅力を感じ、2017年に上田市に移住。観光関係の広報の仕事や、イラストレーターとして活動中。手相鑑定士でもある。趣味はレトロな風景を求め旅に出ること。とくに喫茶店や工芸品、温泉などが好き。
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