身近にこんなワクワクする場所があったなんて。

上田市と軽井沢を結ぶ浅間サンラインの途中、「菱野」の信号を曲がり、のどかな山道をのぼっていくこと約2キロ。標高約1000メートルの大自然の中、歴史ある旅館「菱野温泉 常盤館」が現れます。
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約800年前に発見され、400年前から湯治場として生業し、小諸藩の藩主や家臣もたびたび訪れていたという菱野温泉。
明治22年(1889)から営業している常盤館は、名物の登山電車で露天風呂へ行くことで知られています。

そんな露天風呂エリアが「雲上の停車場」として2024年8月にリニューアルしたばかりと聞き、ひなぽんが潜入レポート。ふつうの日帰り温泉とは異なり、旅情や冒険心を駆り立てられる素晴らしい場所でした。

登山電車で行く雲上の世界

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さっそく旅館の中へ。きれいなロビーを何気なく眺めていたら、奥のガラス扉に「展望露天風呂 雲の助 登山電車」の文字が。よくよく見るとガラス越しに登山電車がすでにスタンバイしている姿も見えます!
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勝手に宿から少し離れた場所に乗り場があるのかと想像していたので、宿につながる形で登山電車があるとは思わず、この時点で大興奮。

これに乗ると、あのアニメや映画のように別の世界へタイムトラベルしてしまうのでは・・・と妄想してしまうくらい、現代では珍しい異質な存在感にわくわくが止まりません。
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ランプが緑色になっていれば運転できるとのことで、どきどきしながらボタンを押して発車。ドコドコドコドコと緑の中を登っていきます。
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すると上からもう一台の登山電車が降りてきてすれ違いました。こうして2機で常に山麓と山頂に待機し、交互に行き来する仕組みになっているようです。

ちなみにこの登山電車は、もともとは資材の運搬用として1981年に造られ、1997年から露天風呂へとお客様を運ぶ電車になったそう。

あっという間に「雲上の停車場」へ到着。その時間わずか1分30秒。楽しすぎました。


自然と一つになる。天国のような露天風呂「雲の助」

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靴を脱いで施設内へ入ると、湯上り処でもあるカフェ&バー「時刻表のない待合室」。

広々として木の温もりが心地よく、ギャラリー兼お土産コーナーも充実しています。温泉の素、地元作家の陶芸やガラスの工芸品、サウナグッズなどが並んでいました。
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とりあえず、まずは温泉に入りたい。
カフェで買ったドリンクを中へ持ち込めると聞き、せっかくなら地元産のものをと、佐久市でつくられているクラフトコーラ「浅間コーラ」を購入。専用のタンブラーに入れてもらいました。

温泉に浸かりながら、コーラを飲めるなんて。なんだか背徳感と高揚感が入り混じった、最高な気分です。
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浴室へ入ると、目に飛び込んできた絶景・・・!思わず息を呑みました。
手前は洗い場もある内風呂の「いしふろ」、外に出ると露天風呂「そらふろ」や休憩スペース「ととのい」、水風呂の「みずふろ」があります。
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体を流し、いしふろにさくっと入ったら、露天風呂へ。視界には蓼科山や八ヶ岳の山並み、佐久平の街並みなどが広がり、手前の森の緑にも癒されます。

空と森と一体になった感覚を味わえる、インフィニティー露天風呂。まさに天国。高野槙の木でできた浴槽で、42℃のアルカリ性単純温泉に浸かり、じっくりと体が温まります。
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しっかり温めたら、20℃前後のぬるめの水風呂へ。ちょうどいい温度で、すべての力が抜けていきます。極上です。ずっと入っていられます。
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休憩スペースで裸で外気浴。さわやかな風に吹かれながら、日々のあれこれも頭から消えていき、整っていきます。側から見たら異様な光景かもしれませんが、誰も何も気にする必要はありません。
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浅間コーラを飲みつつ、繰り返すこと3セット。こんなにすばらしいロケーションでリラックスできる温泉が身近にあったとは、なんて幸せなのでしょう。
ちなみに登山電車に乗る前の旅館の1階にも大浴場があり、そちらも利用できます。


カフェ&バーでおいしいランチタイム

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お風呂から上がり、この日は天気もよく過ごしやすい日だったので、テラス席へ。森に囲まれ、そよぐ風に葉擦れの音、鳥の囀り。その場にいるだけで心が解けます。

フードメニューから「サまん」、「信州味噌とんこつラーメン」のハーフサイズを注文。
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サまんとは、信州ならではのおやきとサウナ文化を融合した、気軽に食べられるサウナ飯。
まーぼー(ラムのひき肉を麻婆味で仕上げたもの)と、るーろー(台湾名物のルーロー飯の具)の2種類の味があり、今回はるーろーを食べました。

もちもちの皮に細かくした豚肉と筍や椎茸がぎっしり詰まっていて、口の中にジュワッと旨みが広がり、美味!

じつはこの森の奥にサウナ施設「TOJIBA」(予約制・別料金)もあり、サウナ利用の方にも人気の一品。おやきに刻印された“サまん”の文字がとてもかわいい。

ラーメンは小諸の山吹味噌を使用しており、味噌の風味とコクがしっかり。太めの麺がスープに絡んで、スルスルと完食です。すっかりお腹も満たされました。
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飲み物は先ほど温泉で飲んだ浅間コーラのほか、オラホビールや軽井沢ビールなどの地ビールも。コーヒーやソフトドリンク、ドーナツなどもあるので、食事をせずにカフェ利用もおすすめです。

非日常を味わう楽園へ

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登山電車が下界から別世界へと誘い、現実から離れ、しばし夢心地な時間を過ごせました。

「近隣の方は近場の観光地としてふらっとお越しください。首都圏の方は高速で2時間もかからず、佐久平駅からも近いので、気軽に来て、日々の情報やストレスを手放してリラックスしてもらえたら」と、「雲上の停車場」駅長の花岡さん。
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宿のそばの池で鴨たちに遭遇。かわいすぎる…!

今回は日帰り利用でしたが、もちろん旅館ですので、宿泊して一日しっかりリフレッシュするも良し。サウナでじっくり整うも良し。

季節の流れに沿って、木々の葉の量や虫や鳥などが代わり、聴こえる音も変わるそう。ぜひここでしか味わえない、登山電車と自然の恵みがもたらす至福の時間をお過ごしください。




菱野温泉 常盤館「雲上の停車場」DATA
住所長野県小諸市菱平762-2
問合せ0267-22-0516
営業時間11:00〜14:30(最終受付)※8月以外の平日は16:00受付終了
定休日火曜日
料金1800円(8月以外の平日1500円)、こども750円(3歳〜小学生)


東信偏愛女子とは……


上田市を中心に活動する女性クリエイターチーム。それぞれの「好き!」をそれぞれの視点で掘り下げ、東信の暮らしを楽しんでいる。
全員一度県外に出たUターン&県外からの移住者だからこそ感じる東信の魅力を感性のおもむくままに取材し、お出かけ情報・暮らし情報を発信します!

メンバーと得意分野 紹介
アユミ(デザイナー)/登山・アート・音楽・美容
ちーやん(編集者・広報)/動物・自然・スーパー・移住暮らし
ひなぽん(イラストレーター・編集者)/ご当地のグルメ・喫茶店・文化・温泉・居酒屋
サポーターさちぽん/グルメ(特にワイン・蕎麦)・イベント


この記事を書いたライター

ひなぽん
ひなぽん
イラストレーター・編集者|千葉県出身。書店に入り浸る学生生活の後、出版社で旅行雑誌の編集者となる。全国各地を取材した経験から、ローカルに魅力を感じ、2017年に上田市に移住。観光関係の広報の仕事や、イラストレーターとして活動中。手相鑑定士でもある。趣味はレトロな風景を求め旅に出ること。とくに喫茶店や工芸品、温泉などが好き。